(『第二回ビデオ課題合否判定』のつづき)
Psychiatric Service Dog(ここでは、『メンタルヘルス犬』とでも訳そうか。いや、もう少し縮めて『メンタル犬』と呼ぼう)なんて、私も初めて聞いた言葉だったから、一体何者なのか、何ができるのか、今一つ良くわからなかった。これについてオンラインコースで学んだので、ここで少し説明しよう。
以前も書いたが、メンタル犬(Psychiatric Service Dog)とは、精神疾患を持つ人を介助するために訓練された犬のこと。したがって、医者から精神疾患を診断された者のみ、メンタル犬を飼うことができる。うつ、PTSD (心的外傷後ストレス障害)、OCD(強迫性障害)、ADHD(注意欠如・多動症)、パニック障害、双極性障害、自閉症などの精神疾患が対象となり、極度の精神的落ち込み、極度の不安、自傷行為などの症状を、訓練された技によって軽減していく。
例えば、過去に家の中で恐怖を経験したことが原因で、PTSDを患っている飼い主の場合、外出先から帰宅した際には、まずメンタル犬が先に家の中に入って、異常がないかを確認する。そうすることによって、飼い主が安心して家の中に入ることができる。
そして、メンタル犬は飼い主の精神的な変化を察知し、すぐに行動するよう訓練される。飼い主がパニックや極度の不安に陥らないように、またそのような症状が見られた場合には、メンタル犬特有の技を使って飼い主の精神的苦痛を軽減する。例えば、自傷行為をしそうになれば、メンタル犬が飼い主に近寄ったり、触れたりすることで、その行為を止めさせるように働きかける。発作が出た際に薬が必要であれば、その薬を取ってくるように訓練しておくことも可能だ。
では、メンタル犬の代表的な技を4つ紹介する。
- Deep Pressure Therapy(『深圧セラピー』と訳そうか):メンタル犬が自身の重さを使って、飼い主の症状を軽減させ、精神的安定を図る治療法。具体的には、小型犬であれば、飼い主の膝の上に座り、中・大型犬であれば、前足を飼い主の膝の上に置くように訓練される。また、飼い主の体(多くの場合、足や腕)にあごを乗せる行為は、体のサイズに関係なく訓練される。
- Face Licking (『顔舐め』):パニックやフラッシュバックなどの突然の症状が出た時に、顔を舐め、飼い主の気を逸らす。また、悪夢でうなされているときも、飼い主の顔を舐めて覚醒させる。症状は飼い主によって様々なので、訓練する時は、自分の発作時の特徴的な行動のまねをしながら、メンタル犬が顔を舐めてくれるように誘導する。
- Orbiting(『周回』):これは混雑した場所で、威力を発揮する。私も経験したが、精神疾患を患うと、多くの場合、人混みが受け付けられず、ひどい時にはパニック症状が出る。その場にいることさえ耐えられなくなるのだ。例えば、空港などの混雑した場所に行った場合、メンタル犬が飼い主の周りをぐるぐる周り、他の人が飼い主に近づきすぎないように、一定距離を保つ。また、必要な時には、飼い主と他の人の間に立つ。うつ以外にも、PTSD 、閉所恐怖症を持つ人にも大いに役立つ。
- 安全な場所と出口の確保:これは、特にパニック障害のある人に役立つ。
オンラインコースでは、上記4つのメンタル犬特有の技も、動画を参考にしながら訓練していく。これらの技は、残念ながら実技テストの課題にはなっていなかったが、テストを受ける前にしっかり訓練するようにカリキュラムが組まれていた。
メンタル犬は、サービスドッグとしての基本行動に加え、上記の技が訓練される。飼い主の心の変化を常に敏感に読み取り、行動することを託された、立派なサービスドッグなのだ。
重度うつにより、さまざまな症状を発した私には、メンタル犬の大切さが良くわかる。サフィーを迎えてみて、ただそばにいてくれるだけで本当に穏やかな気持ちになれるのだが、今回メンタル犬の訓練を受けたことで、より強固なパートナーとなってくれた。メンタル犬がもっと世に認知され、活躍できることを願う。
(『メンタル犬になるための、具体的流れ・金額・期間』につづく)